実現論について、「モグラやサルなんか人間に関係あるのか?」という疑問を持つ方が多いようです。

「生物で当てはまることが全て人間に同じように当てはまる」というのが『生物学的還元主義』。
この「主義」とつくものは、たいていがイデオロギーなんですよね。

私も、“そのまま”当てはめるというのはおかしいと思います。

ヒトは高度に社会的生物なので、サルで有効な生物学上の話(例えば本能とか)も、社会環境からの影響が大きすぎるために当てはまらない。という主張がありますが、サルは高度に社会的な生物だと私は考えています。生まれてすぐ、群から離されたメスザル(ニホンザルの例ですが)は子育てもできないそうです。育っていくうちに、周囲から学んでいくんですね。

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だから、サルの例は、かなりの部分で、人間に当てはめても差し支えないのではないか、というのが私の見解です。チンパンジーと人間のDNA塩基配列は、99%以上がが同じ、という話ですし(おっと、これは根拠にならない)。

以前、テレビの特集番組で、チンパンジーのボス争い(チンパンジーにカルンデとかトシボとか名前が付いていました。京大霊長類学研の先生がナビゲーター)の番組を見ましたが、3頭が連合をつくったり、はたまた離れてそれまでの敵と毛繕いをしたり、まるで人間の心理戦の勢力抗争そのものでした。

私たちは、えてして「人間は特別だ」と偉そうにしてますが、どちらかというと、さしてサルと変わらないと思います。要するに、人間が思っている以上にサルなのです。それを忘れて自然の摂理を踏み外したから、環境破壊によって滅びようとしてるのですかね(と私は思う)。


概ね当てはめてよいと思うもう一つの根拠は、人間と動物(哺乳類)の脳構造の共通性です。

脳幹、小脳、中脳、視床、大脳辺縁系、このへんまでは脊椎動物で、まして哺乳類であれば、大きさは違へどほとんど構造と働きは同じです。人間と言えども、その古い(?)脳に、大脳新皮質という新しい脳がぬり重ねられてできているわけです(発生段階においてもそういう形成のされ方をします)。

要するに、大脳、特に前頭葉の発達が人間に特殊なだけです(イルカやクジラも極めて発達しているらしいですが、詳しくは知りません。エコーロケーションのために発達した、というのが通説ですが)。

肉体の制御と生命の維持(自律神経)や、本能レベルの性欲、怒りやおびえなどの感情など、生命としての基本的な働き、私たちの行動を陰で律しているのは、この古い脳です。また、大脳新皮質で組み立てられた刺激も、ほとんど全てが、この大脳辺縁系までの古い脳にフィードバックされます。

「人間には知性がある、理性がある、社会性がある。だから動物とは全く違うんだ」という言説をよく耳にしますが、知性も理性も脳のほんの表面での出来事であって、たいていは、原始の脳の欲求を後付で説明(言い訳?)しているに過ぎません。そんな、生命としての人間の本質から遊離した観念によって立つと、かえって事実を見失うのではないでしょうか。

以上より、私は、例えではなく、人間とサルはかなりの部分で同じだ、と思いますが、どうでしょうか。だから、サルは人間の社会を考える上で大いに参考になる。

でもサルの前に、サルまで進化してきた生物のプロセス、オスとメスの分化過程はどういうものだったのか、を知らなければならないかな、と思います。

生命の基本原理、進化原理等をきっちり押さえていく議論が必要でしょう。


蘆原健吾