『実現論・前史イ』に触れられている以下の文章についての検証及び考察だと思います。

「従って、歴史的に形成されてきた存在は(=進化を重ねてきた存在は)、生物集団であれ人間集団であれ、全て始原実現体の上に次々と新実現体が積み重ねられた、進化積層体(or塗り重ね構造体)である。つまり万物は、それ以前に実現された無数の実現体によって構成されており、それらを状況に応じたその時々の可能性への収束によって統合している、多面的な外圧適応態である。」(実現論1_1_00

にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
私は、塗り重ね構造とはかなり広い意味で大雑把に理解していますが、進化に関する議論を進めるためにこれに関しての意見を述べさせていただきます。例えば、

>生命が環境に適応して進化してきた過程の中で、適応方法は大きく分けて3つあるのではないでしょうか。そのいずれも「進化の塗り重ね構造」を基に適応してきたと見ることができます。<

と、述べていらっしゃいますが、「塗り重ねを基に適応してきた」という使い方は、「塗り重ね」がアプリオリとなっています。大進化にしろ小進化にしろ、あるいは連続・不連続の進化といっても、アプリオリに進化積層体であるといっても、時間の矢がある限り、つまり進化する限り別に大きな問題はないと思います。しかし、それでは生物は進化するものという意味であって、「進化積層体」の意味が明らかになりません。もちろん1~3の適応方法(私は適応戦略の方が適切かと思いますが)を明らかにするということが、その共通性に「塗り重ね」が見られるということを示す目的でしょうか。例えば2の

> 2つ目は、有性生殖による多様性の獲得が上げられます。今までのお互いのDNAを合成し多様な方向へ進化することにより環境に適応してきました。この場合、急激な変化ではなく世代による緩やかな環境への適応と考えられます。<

などは、「有性生殖による多様性の獲得」と「塗り重ね」とが直接結びつきません。有性生殖という新たなる機能(適応戦略・戦術)の獲得が、それ以降進化した生物の生殖機能に備わりそれが下部構造(あるいは下部階層)となって、塗り重なっているというのなら論理的に理解できますが…。もう少し適応の中身と有性生殖の進化中身の検証が必要ということでしょうか。ただ、適応戦略を考察することによって、意味を明らかにするという視点は重要だと思います。

また、
>進化系統樹というものがありますが(これもまた一つの解釈・仮説より導きだされたものですが)、ある生物以前の形態に近い生物をさかのぼって関連づけが可能です。これは、その時点での適応機能に(少なくともそれに関連した)新たな機能が付け加わる形で進化が進んできたことを示唆しています。
その意味で、生物は塗り重ね構造体(進化積層体)である(人間の脳の構造もそうなってますけれどね)。この点は、実現論の最初のページにも書いてあります。<

生物の脳の進化や人間の大脳の積層構造(コラム構造)を見ても、過去の生物の機能が塗り重なったものだろうとは私も思います。(機能の塗り重ねという意味は、過去の機能はそのままにしてというよりも、過去の機能を生み出した要素を再編成して新しい機能を生み出した、と言う方が正確かもしれませんが…)ただ、系統樹は機能や形態や遺伝子の類似性に着目しているといってしまえば、これも進化積層体の意味といってもほとんど「進化」と同意ではないでしょうか…。

だから、私は「進化積層体の意味」を考えるのならば、その前の段階の検証考察こそが重要であると思います。実現論の前史イには、進化積層体に関する前提として、

「生きとし生けるものは、全て外圧(外部世界)に対する適応態として存在している。例えば本能も、その様な外圧適応態として形成され、積み重ねられてきたものである。また全ての存在は、本能をはじめ無数の構成要素を持っているが、それら全ては外部世界に適応しようとして先端可能性へと収束する、その可能性への収束によって統合されている。また、外部世界が変化して適応できなくなってくると、新たな可能性(例えば、DNA塩基の組み替えの可能性)へと収束し、新たな可能性(新たな配列)の実現によって進化してゆく。」(実現論1_1_00

つまり、外圧適応態である。そのために先端可能性へ収束するとあります。まずこの点を明らかにすることこそが、進化積層体の有意味さが明らかになるのではないでしょうか。

吉国幹雄