2013年01月

欠乏と進化

大串さん、こんにちは。廃棄物の問題。現代社会の(といっても、本によると日本では江戸時代の大都市江戸においても頭の痛い)厄介な問題ですね。この廃棄物利用の進化ですか、おもしろい視点ですね。マイナス進化、弱者の進化の範疇で捉えたらよいでしょうか。その意味では、ありうる話であると思いますが、ただ、もうちょっと突っ込んで考えてもおもしろいと思います。

>欠乏からはたいした知恵も進化も生じないということです。<(10081、大串さん)

この部分の欠乏ですが、「過剰(余剰)」の反対語の意味で「欠乏」として使われているのでしょうね。少し誤解と混乱をおこしそうです。実現論では「欠乏」は「適応欠乏」というように活力源とほぼ同義で使われています。外部の感覚機能を意味するだけではなく、どちらかといえば内部の感覚機能に密接な関係を持たしています。従って、「欠乏」と対峙されるのは「充足」という概念です。だから、欠乏(根源)があるから行動するというのと充足(先端)を求めて行動するというのは結果的にほぼ同意になります。根元と先端の違いです。(原因と結果と捉えても結構です)。たとえば、「性欠乏」と「性充足」ということでしょうか。性欠乏によって性情動が起こり、性充足されればさらに可能性収束して、性機能を発達させる(適応進化する)ということでしょうか。いったいそこに廃棄する何があるというのだろう、と考えてしまいそうです。

続きを読む

豊かさか欠乏か

なるほど。既存の生態系において多量の「廃棄物」も、それを利用できる生物にとっては「豊かさ」になりますね。

しかし、私も山田さんが言われるように、進化の条件とその背景とを区分する必要があるのではないかと思います。

それまで多数派だった嫌気性生物にとって、酸素は単なる「廃棄物」ではなく否応も無い「有毒物質」だったわけです。彼ら嫌気性生物にとって、大気組成の酸素比率が増していくことを「公害」と思いこそすれ、「豊かさ」とは考えられなかったでしょう。

人類にあてはめれば、大量のダイオキシンや核廃棄物を「豊かさ」であると思え、というような実に乱暴な話になります。

議論の出発点は「生物進化の条件」でしたので、嫌気性生物の多くが死滅し、進化した好気性生物にとっての「豊かさ」を論じてもあまり意味がないのではないでしょうか。(ただし酸素は、「豊かさ」であると同時に、活性酸素の様にDNAを傷つける「毒」の一面もあります。)

生物を進化させる条件としての「ぎりぎりの生存圧力」とは、単に「欠乏」のことではなく、嫌気性生物にとっての酸素の様に、生命の危機に晒されるような「不全状況」ではなかったかと思うのです。

鈴木隆史 

廃棄物が富に変身

<ここでの豊かさとは、それまでの生物にとって猛毒であった酸素がたまった状況のことでしょうか?何が豊かさなのか?わかりにくっかったので教えてください。>

酸素の場合、たしかに嫌気性生物にとっては猛毒なのですが、その一方で糖との反応で大きなエネルギーを生み出す可能性をもっていたわけですね。そこで、なんとか酸素の毒に耐えるだけでなく、酸素の秘めるエネルギーを利用できる生物にとって、酸素大気はものすごい「富」であることになります。その上、今までの生物は全て嫌気性で酸素に耐えられないから、酸素大気にさらされた場所では初期の好気性生物は競争相手が全然いなかったことになります。まさになんでもやり放題の別天地が突然開けたのですから、爆発的に増えるのも当然でしょう。
続きを読む

> ぎりぎりの生存圧力が、生物が進化するためには不可欠、ということをおっしゃりたいのはわかりました。楽チン志向で生きていける今の世の中は本当にヤバイということですね。

>逆に、ある特殊な状況に過剰適応してしまうと、状況変化があったときに対応できず、存在ができなくなるのではないか、というの先の投稿で言いたかった趣旨です。<(8955、蘆原さん)

これって、「奢れる者久しからず」っていうことでしょうか。「過剰適応」という言葉が適切とは思いませんが、言わんとすることはなんとなくわかります。過剰というイメージから類推するに、長期にわたって安定的(→恒常的→固定的)に適応してきた。あるいは、他者(他種)との関係において、圧倒的な力の差によって他種を滅亡に追い込み自らの種の個体数を過剰に増やしてきた、ということでしょうか。

問題はなぜ過剰適応すると適応できなくなってしまか、ですね。

>「ぎりぎりの生存圧力」だけでは種の遺伝子がせこくまとまってしまって、かえって生命力がなくなってしまいます。過剰適応というのはそういう状態でしょう。< (9636、大串さん)
 
これは、敵がいない(あるいは人類的な表現なら貧困の圧力がほとんどかからない)と、使わない遺伝子が多量に眠ってしまう、もしくは遺伝子の活性度(もちろん遺伝子に換言するつもりはありませんが)が極端に下がり固定的(あるいはホモ的)になる。変動圧力(例えば敵の出現)によって一気に滅びる。つまり、外部環境によって滅亡。

続きを読む

生存圧力が低いことはポジティブな条件でもありえます

> ぎりぎりの生存圧力が、生物が進化するためには不可欠、ということをおっしゃりたいのはわかりました。楽チン志向で生きていける今の世の中は本当にヤバイということですね。

 今人間に起きているのは「放散」でしょう。多少遺伝的に不利な条件を背負った人でも社会がサポートして生存が可能になっています。こういう状態を「遺伝子が弱くなる」と危惧する人もいますが(優生学的見方)、進化という点からみるとむしろ遺伝子プールの多様性が増すことはこれまでにない種が出てくる可能性を増すことになってポジティブであるということになります。
 「ぎりぎりの生存圧力」だけでは種の遺伝子がせこくまとまってしまって、かえって生命力がなくなってしまいます。過剰適応というのはそういう状態でしょう。
 


大串幹夫

ギャラリー