2015年03月

ゲノムを溜め込む仕組み:遺伝子重複

> こういった高い外圧の下では、塩基をため込む性質があるのでは?
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全生物は、そのゲノムサイズ(核DNAの塩基対数)によって、大まかに4つのグループに分けられるらしい。最もゲノムサイズの小さい原核生物のグループ、次いでカビ、シロイヌナズナなどのグループ、ヒトを含む大部分の動物と少数の植物のグループ、そして、多くの植物とハイギョ・サンショウウオなど一部の動物のグループだ。(リンクの図1)

生物の進化過程で、なぜゲノム量がこのように蓄積されていくのか。現在は「遺伝子重複」がその主要因の一つではないかと考えられている。

> ヒトやネズミの染色体を分子レベルで調べると、多数の良く似た遺伝子が見つかる。例えば哺乳類はヘモグロビン遺伝子座を普通は3つ、多くて5つ持っている。一方、マスやサケはほぼ10個のヘモグロビン遺伝子座をもち、それぞれは非常に良く似た分子であり、共通の祖先遺伝子が遺伝子重複したことで出現したらしい。

> このようにゲノムDNA量増加の機構はまったく新しいDNAが何もないところから合成されるのではなく、すでに存在しているDNAをコピーし倍加させるという方式で生じたのである。(同上)

さらに最近では、この重複と変異によって増加した遺伝子の影響を当初は発現させずに隠しておき、カンブリア大爆発の時のように一気に発現させる機構も次第に明らかになりつつあるようだ。

> これには、HSP90というタンパク質が関係している。HSP90は、すべての生物にあるタンパク質で、細胞がストレスを受けると、増産され、ストレスで立体構造がおかしくなってしまったタンパク質を正常に働かせる作用をもつ。通常は、主に細胞内での情報伝達や細胞同士の情報のやりとりを支えるタンパク質に作用して、それらがひも状の状態から折り畳まれていく過程や、集まって複合体を作る過程を助けている。

> HSP90は、異常なタンパク質を正常に働かせる役目をしてゲノム内に変異をため込んでいき、その量がある閾値に達すると、それらを一挙に顕在化させるのである。こうして連続的に起きているDNAの変化と断続的に起きる形や働きの変化が結びつき、進化は起きると考えられる。(リンク

ハイギョやサンショウウオ、シダの一種マツバランのDNAには、役に立たないジャンク遺伝子がいくつも重複されている。水棲から陸棲に生物が移行する際、来るべき肉体の大改造に備えて遺伝子重複を極限まで高めた痕跡が、現在の膨大なゲノムサイズに残っているのではないだろうか。





田中素

進化とは可能性収束であり前進では無い

>進化が後退する。こんなことはあるのだろうか?

“進化は常に前進である”この認識が誤りではないでしょうか?
「進化」という言葉にはたしかに「前進」のイメージがありますが、実際は「可能性収束(その時点での可能性に向かって進んでいく)」という意味合いしかありません。
そのため、その変化を結果として見た時に、「後退」に見えることも十分に考えられます。

おそらく初期人類も、その後の洞窟における極限状態での生活ぶりを考えると大幅な「後退」であったと言えると思います。







匿名希望

「失敗」と「成功」という2元的な価値判断のアヤシさ

ん~…。

>実践し、結果⇒評価⇒成果は出せ、それが「現実を対象化する思考」(健全な思考)の在り様なのだ、と思いました。
そして、よく、何かを実践するにあたって、その根拠が問われる場合がありますが、根拠への拘りは、成果への弊害でしかない、と思いました。

これで閃いたのですが、物事の事象や推移というのは、一定の方向に
しか進んでいかないのですね?多分、生命の進化も同じで、”進化”
という一定の方向における「適応と淘汰」の差異はあっても、それが
「成功or失敗」であるか?を判定する根拠にはならない、と…。

そうでないと
●昆虫はダメで魚はマル…①
●飛行機はOKで船はNG…②

などという、オカシナ論理になってしまう。
そうではなくて、「手段=可能性とそれに対する最も適した形態」
という考え方で捉えれば、

①は環境に応じた適応の在り方の問題。昆虫と魚のどっちが優れた生命
 種であるか?などと論じる事自体に全く意味がない。(その個体の
 構成要因である機能や特徴のどちらが複雑か?で優劣を決めるにして
 も、行動様式が環境に応じて適応してきた経緯を要因として組み込む
 のであれば、優劣の判断は不可能)

②これは、一定の方向性という視点で言えば、輸送・運搬に対する
 適応の問題。船と飛行機ではどっちが優れているか?ではなく、
 「この場合は海上輸送が適している」、「この場合では飛行機の
 ほうが効果がある」という判断が最も順当ではないか?

こう考えると、その場(瞬間?)に際してそぐわないとされる行動や
事象は、それが失敗を意味するものではなく、一定の方向性における
過程にすぎないという見方ができるのではないでしょうか?

その、いわば「流れ」のようなものをわざわざせき止めて分断し、
「この限定された条件の中においては、これは失敗、これは成功」
と判断していくといのは、あまりにも不自然なのではないか?と
いう気がしてきました。

>しかし、自然科学さえ、倒錯観念の支配から完全には脱却できず(exデカルトの「方法序説」)、未分明な根本ドグマに基づいて命題や定理が作られ、現実そのものからかけ離れた条件下での実験が行われてきた。従って、科学法則の多くは、現実そのものを対象化した事実認識とは(厳密には)云えない。

↑この表現も、恐らく経過と事象が並行する中での状態を観察・記録
するのではなく、まず始めに「成功と失敗」という(ONとOFF、YesとNo
も恐らく同じカテゴリーでしょう)2元的な価値判断が前提に在って、
その価値と現実に起こった(または現在進行中の)出来事を、
その2元的価値観に当てはめるという手法で進化を捉え、定義してきた
事が根本的にオカシイということを指摘している文章なのだと思いました。


★「事象と時間の推移は同時進行です。その流れは多様性を派生させ、
 その先端で適応できるか否か?という現実はあっても、その事自体が
 正しいとか間違っているの判断では定義できない!」
              ↓
★「しかしながら、最も可能性に収束した事象が、より存在を強くさせる
 ものであれば、その瞬間を(現時点における)「成功」と定義しても
 よい」



したがって…
●結果⇒評価⇒成果は出せ、それが「現実を対象化する思考」



…ではなく、「”事実”と可能性という現象は現実を対象化する中に
おいて、その順位が最も適した形態の中から発見される。(事象と
時間経緯は並行するので)」


恐らくこれが『実現の論理』、そして『構造認識』なのだと思います。


つまり、これまで常識として刷り込まれた考察法や手法、そしてそれに
より大切にされてきた価値観は、根底的に、木っ端微塵に、跡形もなく
量子レベルの微細さに到るまで粉々に破壊し、未来永劫に葬り去らな
ければ、人類はその歪んだ観念機能を保持し続けるが故に滅亡してしまう可能性があるのではないでしょうか?

それが…『認識転換』。
(※認識転換も、”一定の方向性”の中から構造認識され、系統だって
 組み立てられる事によってしか成されません。)

つまり、「失敗と成功」など、一個人の判断や思い込みで判定できる
ものではないし、その思い込みを広く共認させる事で序列を構成させて
きたのが、いわゆる「学会のドグマ」なのではないでしょうか?






Silentservice

タンパク質合成におけるRNAの「仕事」

>生物学の世界では生命情報の‘保存’や‘記録‘や‘伝達’ばかりに注目が集まっていて、最近は‘仕事’という側面が軽視されているように感じています。大胆に単純化するなら、DNAは‘保存’や‘継承’を担い、RNAは‘仕事’を担っていると言えると思います。158140

 最近DNAとRNAの違いって結局なんなの?という疑問を持っていたのですが「仕事」という概念で考えるとDNAとRNAの違いが明確になりそうです。
 そこでRNAの代表的仕事であるタンパク質合成におけるDNAとRNAの働きを整理してみました。
 土山さんも投稿されているようにこのDNAとRNAを理解するに当たって重要な事は、
「DNAは、遺伝情報をストックしておくCD-ROMみたいなものである」
「RNAはたんぱく質を作り出す過程で様々な役割を果たしている」
という2点だと思います。
 そして、何よりも押えておきたいのが、RNAにくっつく頭文字は、「成分の違いでなく役割の違いを表す記号である」という事です。学校で言うと図書係とかその程度だ、という事です。
 それでは、実際にタンパク質合成におけるDNAとRNAの働きを整理していきます。
 たんぱく質合成の大まかな流れは、転写⇒翻訳です。転写では、RNAがDNAの情報をコピーします。そして、そのコピーした情報を元にタンパク質が作られる過程を翻訳と呼んでいます。
 タンパク質合成に関与するRNAは
①mRNA=メッセンジャーRNA
②rRNA=リボソームの中のRNA
③tRNA=トランスファーRNA
と呼ばれる3つのRNAです。それぞれが異なる役割を果たすのですが、分かりやすくする為にm君、r君、t君と置き換えて見ます。DNAはもちろんCD-ROMです。タンパク質はDNAというマニュアルを使用しつつm君、r君、t君が協力する事で合成されていると考えるとすっきりします。

 さて、タンパク質合成の為に必要というと、
「場所」、「マニュアル」、「材料」ですが、これらを確保する為に先程の3人が協力しているのです。
 まず、作る場所はr君(rRNA=リボソーム)の家です。r君の家は、広いから作るのに適していたのでしょう。また、作る為には「マニュアル」が必要です。その「マニュアル」は当然CD-ROMに入っているのですがr君の家にはありません。そこでm君(メッセンジャーRNA)がCD-ROMをコピーして持って来てくれるのです。但し、全部はコピーしきれないので必要なページだけコピーします。
 最後は、材料です。マニュアルがあっても肝心の材料が無いとなんにも出来ません。そこで活躍するのが材料調達上手のt君です(トランスファーRNA)。t君は、たんぱく質の材料である「アミノ酸」を持って来てくれます。
 これで「場所」、「マニュアル」、「材料」が揃い、タンパク質を作ることが出来るです。






アリンコ

生殖細胞と体細胞の起源(ゾウリムシの事例から)

ゾウリムシは有性生殖と多細胞化の起源をなすモデル生物として、以前から研究が重ねられてきた。最近の知見をまとめてみる。
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■分裂の限界と接合による再生
単純な細胞分裂だけでは、700回(種によって約150回~約700回の幅がある)が限界で死んでしまう。他の個体と接合し、減数分裂を行って小核を融合することで再生し、再び700回の分裂ができる。

■未熟期と老衰期
接合により生まれ変わった個体は、すぐには次の接合ができない未熟体である。約50回の分裂を行うことで性的に成熟し、接合が可能になる。また逆に、600回以上の細胞分裂を行った個体は、接合能力を失ってしまい、残り約100回の細胞分裂を経て死を待つ老衰体となる。

■「自家生殖」という仕組み
成熟した個体が接合する相手が見つからない場合、自らの細胞内で小核を減数分裂させ、自家受精する自家生殖(オートガミーと呼ばれる)を行う場合がある。この時も、通常の接合と同様、分裂回数はリセットされる。

■小核と大核
ゾウリムシは、小核と大核の二つの細胞核を持っている。小核が二倍体なのに対し、大核は数百倍体のゲノムを持ち、通常の細胞分裂に関わるタンパク質合成を行っている。小核は細胞分裂時にはほとんど働いていない。大核は、接合または自家生殖時には一旦消滅し、減数分裂→受精によって生じた新生小核から分裂生成される。

■細胞分裂の回数は大核DNAが規定している
分裂回数の少ない若い個体の大核を、分裂回数の多い(老化した)個体に移植すると、老化個体の分裂回数は若い個体の残存分裂回数分だけ回復する。逆に、老化個体の大核を若い個体に移植すると、その個体は老化個体の残存分裂回数分だけしか分裂ができなくなる。同じように老若個体の小核を交換移植しても、このような現象は起こらない。
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こうしてみると、ゾウリムシの小核は明らかに生殖細胞の起源であり、大核は体細胞の起源であることが分かる。

なぜ真核単細胞生物がこのような機構を獲得したのか。大型化・高機能化し、多量の遺伝情報を制御しなければならない真核細胞にとって、分裂や代謝過程でのコピーミスの蓄積が大きなリスクとなっていき、一方でリスク要因である単純分裂を制限し(大核→体細胞)、一方で制御された小変異を組み込みながら確実に生命を繋いでいく保存の機能(小核→生殖細胞)を分化していくことが、適応上有利だったのではないだろうか。

(参考)
ヒメゾウリムシにおける大核交換移植を用いた加齢の研究リンク
ゾウリムシの生命サイクルリンク
細胞寿命起源論リンク




田中素
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