2015年04月

雌雄分化は遺伝子の協働の賜物

性決定遺伝子の働きのみによって、オスメス分化が成されているかのような誤解が一部に存在する向きがあるが、雌雄分化が促進された哺乳類や鳥類では、躯体のオスメス分化(差別化)は少なくとも三段階存在する。
①共通の性腺から、精巣・卵巣各々を作る指令を行なう遺伝子が発動する段階。
②雄性、雌性のホルモン分泌によって体細胞の機能が変化し、雌雄の体細胞が差別化される段階。
③脳の神経細胞の差別化が促進される段階。

例えば①を司る遺伝子群が発動する事で②を司る遺伝子群が発動し(封印が解除され)②の遺伝子群が発動する事で③を司る遺伝子群が発動される、という風にそれぞれの遺伝子群は連鎖して発動されている。
逆に、鳥類の(ニワトリ)事例に見られるように①で一旦精巣づくりが指令されたとしても②の段階で何らかの理由によって、雄性ホルモンの分泌量が多くなると、①の段階にフィードバックされ、卵巣作りの指令が出しなおされるなど、それらは単純なフローではなく、相互連関関係にある。続きを読む

白亜紀末の大量絶滅原因の諸説

実は、白亜紀末(6500万年前)の恐竜やアンモナイト等の大量絶滅の原因は定説が定まっていない。巨大隕石の衝突説が流行りではあったが、それだけでは説明できない事実がいろいろと指摘されている。今では巨大隕石衝突説は最後の止めを刺したかもしれないが、主原因ではないとする説の方が主流である。

主な反論を調べてみると、
①ワニやヘビ、カメ、トカゲ、昆虫等は絶滅していない。
②絶滅は短期間に起こったものではなく、白亜紀中期~末期にかけて長期間で段階的に起こっている。(アンモナイトや恐竜の種類が減少している。恐竜の絶滅はK-T境界層(6500年前)が堆積する1000万年も前から始まっている。)
③K-T境界層の上、隕石衝突後少なくとも4万年が経過した地層から、最後の7属の恐竜化石が発見されている。
④これまで研究されたK-T境界層の中やその直下からは、恐竜の化石は発見されていない。
⑤巨大隕石衝突は白亜紀末だけではない。(中生代には白亜紀末と同程度の大規模な衝突が5~6回以上あったと考えられているが、白亜紀末まで恐竜は絶滅していない。)
続きを読む

RNAウイルスの変異活性

インフルエンザやエイズウイルス(HIV)などのRNAウイルスは変異速度が非常に速い。例えばHIVのRNAは未治療の感染者の体内で1日に10億~1兆もの複製を行うが、その子孫ウイルスのうち約30%は遺伝子変異を組み込んでいるという。これは、真核細胞生物やDNAウイルスの100万倍以上のスピードとなる。

HIVウイルスの変異がここまで速い理由は3つほど挙げられている。

①DNAと異なり1本鎖であるため、修復機能が働かない。
 HIVウイルスのゲノムサイズは約1万塩基対あり、1回の複製につきそのうちの2.5~6箇所で塩基置換のエラーが導入される。
続きを読む

■外圧情報はどのようにして遺伝するのか?1~HY抗原と臓器移植時の拒絶反応~

>オスのみに存在する抗原タンパク質(HY抗原)の存在(166118

■HY抗原【エイチワイこうげん】(Histocompatibility Y antigen)(リンク
Y染色体のSRY遺伝子(sex determing region Y)上に存在する遺伝子により作られるタンパク質で、生殖腺原基を精巣として分化させる作用を持つ。男性から女性に臓器を移植する際には女性には存在しないこの抗原の存在により拒絶反応が起る場合がある。

■HLA【エイチエルエー】(リンク)(リンク
HLAとは、Human Leukocyte Antigen(ヒト白血球型)の頭文字をとったもので、1954年に発見された。
現在では白血球だけの血液型ではなく、赤血球以外の体中の細胞に存在する「型」であることがわかっている。
体の免疫反応の主役を果たしているため、骨髄や臓器の移植の成否に大きく影響する。

組織の細胞表面には同種でも固体ごとに異なった抗原が存在し、他の固体の細胞を移植するとその抗原に対する免疫反応が生じて拒絶反応が起きる。このような抗原を組織適合抗原と言う。その中で特に重要なものは染色体上の一部に存在する遺伝子群により発現するものを主要組織適合抗原系(major histocompatibility complex)MHC という。それをヒトの場合、HLA(human leukocyto antigen)という。また、ABO型抗原もMHCの一つである。その他にも副組織適合抗原というものが存在し、MHCほど早くないがMHCがあっても拒絶が起こる場合がある。例として、Y染色体上に存在するH-Y 抗原(男性の臓器を女性に移植した場合に起こる拒絶反応に関与)がある。
------引用終り

細胞膜表面には、多くの抗原があるようです。その中でも、移植時に問題の起こる抗原を組織適合抗原といい、その中でも染色体上の一部に存在する遺伝子群により発現する抗原をMHCという。人の場合、それをHLAといい、それ以外にHY抗原があるらしい。
続きを読む

四肢で立ち上がる為には

現在の爬虫類は地面を這う形で行動する。爬虫類だけではない。昆虫も含めて殆どの動物は地に這う形で行動している。その意味では地上から立ち上がった動物は、哺乳類(と鳥類等恐竜の子孫)のみである。

四肢で立ち上がるためには、かなり困難ないくつかの条件が必要になってくる。一つは体高が高くなると、そこに血を送る事が(地面に這う=体高が低い状態に比べて)はるかに困難になる。つまり心臓が生み出す血圧が相当高くないと実現しない。同時にその血圧に耐えられる、丈夫な血管と皮膚が必要になる。

第二に地に這う=腹や尻尾も体を支えている状態に比べて、四肢で立つということは肢にかかる重力が遥かに増大する。
それに対して立ち上がることのメリットは、体高が高くなる事で、敵を察知しやすくなる。肢が長くなる事で移動スピードが上がる事である。

では哺乳類はいかにしてそのような能力を獲得するに至ったのだろうか?
恐らく心臓の機能の上昇は土中時代に始まる。土中は通常地上に比べて酸素不足の環境である。この少量の酸素を有効に利用する為に、心肺機能を発達させたのであろう。かつ恒温性の獲得の為には体中に酸素と栄養分を常時大量に送る必要があり、そのことも心肺機能を高める方向で進化させた要因となっている。
また哺乳類の骨格上の特色は、骨が固くかつ肋骨が胸部にしか存在しないない事である。それに対して両生類の骨は軟骨に近く、重い身体を充分に支えられる硬度にかける。また爬虫類は、肋骨が首から尻尾の部分にまで存在し、体を守るためには丈夫であるが、体の大きさに比べて骨の量が多く、従って身体が重い。哺乳類が立ち上がる事が出来たのはこの四肢に掛かる荷重の低さにその要因がある。

しかしこれは逆に言えば、最も重要な心臓と脳を除いて骨格による体躯の防衛を犠牲にしたということでもある。
これは、恐らく弱者であった哺乳類が、防衛を犠牲にしてでも、素早く逃げる事に可能性収束した結果ではないだろうか?

(因みに鳥類や恐竜も一定の心肺機能を有しており、かつ身体を軽くする為に、骨の中を空洞にしていた様である。その結果防衛機能はやや弱く、かつ哺乳類ほどには心肺機能を発達させていない為、動きは哺乳類に対してやや鈍い。その中途半端さが空を飛ぶ鳥を除いて、立ち上がるは虫類が生き残れなかった、もう一つの理由ではないだろうか?)

北村浩司
 
ギャラリー