2015年05月

脳研究を左右するキリスト教的生命観

>だから同様に、大脳新皮質や有髄神経のみを重視した研究が、本質を何も突き止められないことも明らかだと思います。<(46885

 「脳は、爬虫類脳(反射脳)、哺乳類原脳(情動脳)、新哺乳類脳(理性脳)の三つから成る」というポール・マクリーンの「脳の三位一体説」が普及したせいで、脳研究といえば、大脳新皮質ばかり注目される状況が長く続いていました。

しかし、発生生物学の最近の成果から、脳が作られる仕組みや学習システムが、魚類からほとんど変わっていないことが分かってきました。

ではなぜ、「脳の三位一体説」がこれほど受け入れられたのでしょうか。

「脳研究の最前線」(理化学研究所 脳科学総合研究センター編)では、キリスト教的生命観が影響していると指摘しています。
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ウィルスの変異の仕組み

インフルエンザは、規模に違いはあるが、毎年流行する。
これは、インフルエンザウィルスの表面タンパク質の抗原性が毎年少しづつ変化する為に、人が持っているウィルス抗体では、対応しきれない為である。

このように、ウィルスは単に増殖するだけでなく、遺伝情報の組み換えによって変異する。遺伝情報とそれを包むタンパク質=カプシド及び脂質二重層=エンベロープ(カプシドのみのウィルスも存在する)しか持たないウィルスは、当然生殖によって遺伝子が組み変わることはなく、以下の2つの仕組みによって、変異が引き起こされる。

1.コピーミスによる突然変異
 通常の生物でも、遺伝子には様々な要因によって突然変異が起こる。
一般的に生物の場合、遺伝情報複製時のコピーミスと、紫外線・化学物質などによる情報破壊によって、突然変異が引き起こされる。
しかし生物にとって、突然変異が適応的である可能性は極めて低い為、損傷を修復する修復酵素によって、変異した遺伝情報は修復される。修復酵素によって、生物の突然変異発生割合は、概ね1/100億にまで抑えられている。
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変異(安定)進化論史③ 多細胞生物 殖産分化~精卵分化

Ⅴ.「多細胞生物1 ~殖産分化~」 10億年前~
  安定機構の進化:生殖細胞(保存細胞)の分化

 約10億年前、生物は細胞一つが生命の単位だった「単細胞生物」から、複数の細胞が寄り集まって生命を構成する「多細胞生物」へと進化する。この進化過程の最大のポイントは「殖産分化」である。

 単細胞生物は、その細胞一つで「保存(生殖)」も「仕事」も担っている。このような性質を「万能性」と呼ぶが、”万能”であるがために、細胞の負担が大きく、高度な機能進化は実質不可能となる。多細胞生物への一歩は、この細胞の「万能性」を捨て、機能分化することから始まる。

 保存を担う細胞を「生殖細胞」へと特化し、その他の細胞が「体細胞」として仕事を担う。こうすることで、種の保存上、最大負担となる生殖を切り離し、体細胞を各機能ごとに特化・増殖していくことが可能となった。
 これが「殖(=生殖・保存)産(仕事)分化」である。 続きを読む

変異(安定)進化論史② 真核n体~真核2n体

Ⅲ.「真核n体」 20億年前~
  安定機構の進化:有糸分裂の獲得・細胞核の獲得
  
 原核生物は、細胞膜から分離した小胞を利用した細胞内情報伝達・エネルギー伝達の高度化→細胞の巨大化→好気性細菌(ミトコンドリア)の取り込み=エネルギー源の取り込みと言うプロセスを得て、真核生物へと進化していく。
 生命を進化史と言う観点でみると、この原核→真核の進化過程は20億年近い年月がかかっており、最も進化の時間を必要としている。これは、「情報伝達の高度化」と「エネルギー源の取り込み」と言う進化が、如何に困難で重要であったかを示している。

 原核生物と真核生物の違いは数多く存在するが、最も特徴的に違っているのが、遺伝情報の保存方法と分裂の仕方である。
 原核生物の遺伝情報(DNA)は、細胞内にルーズに分散しており、分裂も”アバウト”。その様式を、解りやすく例えるなら、”アンコ入りのまんじゅうを大体2つに割る”分裂。中に入っているアンコは、偏っているかもしれないので、正確に2分することは極めて難しい。遺伝情報が複雑でない、原核生物であれば、このような”アバウト”な分裂でも、損傷した遺伝子を修復酵素で復元すれば問題なかった。
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変異(安定)進化論史① RNAワールド~原核生物

2月10日に行われた、第87回なんでや劇場「生物史から学ぶ自然の摂理⑦ オスメスって、どうやって決まるの?2 ~変異と安定、どうなっているの?~」によって、これまで「生物史から学ぶ自然の摂理」シリーズで展開されてきた、「変異と安定の分化」「変異(安定)進化論」が一定の収束を迎えた。

ここで、87回なんでや劇場で配られた資料34「オス雌分化と変異メカニズム進化の俯瞰」リンクを元に、これまでの内容を「変異(安定)進化論史」として、まとめてみる。

Ⅰ.「RNAワールド」 46億年前~
  変異機構の進化:活性度の高いRNAによる変異。

 46億年前に地球が誕生し、36~40億年前に始原生命が誕生する。
この始原生命がどのようにして誕生したかと言うのは、生物学会でも未だに論争が続いているが、最も有力なのはRNAがその起源になったとする、「RNAワールド」説である。なんでや劇場でも、基本的にこの説が最も論理整合性が高い→事実であると考えている。
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